観光情報を調べたり、宿を探したりして、すっかり京都へ行くつもりになっていた矢先のことである。
家の外から矢庭にドスンという鈍い音が轟いてきたので、恐る恐る外に出て音がした方へ行ってみると、雨樋が庭にぐったりと横たわっていた。どうやらベランダ下部に位置する雨樋の周辺部分(軒天)が雨樋を支えきれなくなったらしい。よく見ると、その軒天も雨樋と一緒に落っこちて、コンクリートに打ち付けられたせいなのか、みるも無惨に飛散し、形骸化していた。
私は驚きのあまり、駆け寄った。雨が降りしぶく中ではあったが、傘もささずに。そして、どこぞの刑事よろしく、それらを丁寧に検めてみた。ともすれば蘇生(自分で修理)も可能なのでは?なんてことを考えながら、ジロジロと鋭い目で睨み回してみた。だが、それらの裏面が青色と緑色に変わっているのを一目見た瞬間に、期待は虚しくも打ち砕かれてしまった。
「こりゃ腐ってるナ」
腐ったみかんは周りのみかんも腐らせるが、うちの軒天も同じように、今回崩れ落ちてきた部分だけが腐っている、というわけじゃなく、腐敗はもっと広範囲に及ぶのだろう。こうなるともはや素人が首を突っ込んだところで藪蛇だ。
吾々はすぐに業者さんを手配し、応急手当をして頂いた。
築三十年で、あまつさえ東北大震災で途方もないくらいのダメージを受けているので、ここいらでそろそろ補強の為のリフォームだとかをしないと、これからはもっともっと、どんどん腐っていって、今度は家全体が駄目になってしまうよ・・・、とは業者さんの談。一通り診終えた後、家を眺めながらそう仰られたのだが・・・、家全体が腐れるだなんて・・・、そんじょそこらの怪談話よりもよっぽど怖い話である。
だが、その前兆は既に現れ始めていて・・・。
「ほら、あそこ。ベランダの右側。だいぶ傾いているでしょ。」
「え・・・。た、確に・・・。今まで全然気付かなかった。」
「あらやだ。本当だわ。いつからだろうね。」
ベランダ部分が明らかに撓っていた。いつ崩れ落ちてもいいくらいに・・・。
折しも業者さんの深刻そうな表情も恐ろしさを助長させるのに一役買っており、私はすっかり恐れ戦いてしまった。
しかし、怖い話はまだまだ続く。
「リフォームするなら、幾らなんですかねぇ?」一緒にいた母がそれとなく業者さんに尋ねる。
「うーん、あそこにジャッキを入れて云々かんぬん、水漏れのために云云かんぬん、塗装もした方が良いから云云かんぬん・・・、まあ、少なく見積もっても⚫︎⚫︎⚫︎くらいかな・・・?」
ひぃっ!⚫︎⚫︎⚫︎・・・。ふ、ふうん。母と折半して⚫︎⚫︎⚫︎か・・・。へ、へぇ。あーそうなんだ。ふうん。まあね、あれだよね。私ね、今ね、金が、無いよね。うん。しかもどうせ後からもっと詳しく検査したら⚫︎⚫︎⚫︎じゃ済まなくて金額が跳ね上がるパターンでしょ?知ってんだから。私。まあいずれにせよ、金は無いよね・・・。うむ。
倒壊も怖いが、金額の方も同じくらいに怖い話であった。かと言って、このまま放置すれば、倒壊→圧死の流れは避けようがなく。然れば・・・、明るい未来のことを思えば背に腹は替えられぬ訳で・・・。
畢竟、首肯!契約!という流れと相成ってしまった。
そうして私は一気にルンペンに。況んやキョウトニイケズ。ぐ、ぐぞゔ。
せっかく行く気満々だったのにな。華の京都へ。はあ。行けるとしたら来年かしら?
季節が変わる•••。
ところで京都といえば、私は京都に本店を構える「松栄堂」さんの塗香が好きなのだ。
塗香とは
塗香は本尊に供えたり、修行者が身体に塗ったりして身を清め、邪気を近づけないために用いるお香です。
写経を行う際にも用いられます。
詳しくは後々書こうと思うのだけど、とにかくこの「松栄堂」さんの塗香はグルマン系の甘いバニラみたいな香りがするので、とても気に入っていて、ほぼ毎日使っている。
だので、京都へ行った際には、「松栄堂」さんで塗香をしこたま買い込んでくる腹積りでいたのである。何やら店舗でしか買えない特別な塗香があるらしいので、それをたんまりと買ってくるつもりでいたのだった。
なのにイケズ(涙)。
ううう。
がしかし!肩を落とすにはまだ早いのである!
9月の中旬頃、私は東京へ行く。(もうすぐじゃん)
調べたところ、東京にも「松栄堂」さんの店舗があり、尚且つ、そちらでも店舗限定販売の塗香は売られているようなのである。
まあ、あいにく文無しなのだが・・・、でも塗香は高くても1個2千円程度だし・・・、それくらいなら大丈夫か!必要経費!必要経費!
というわけで、時間が出来たら「松栄堂」さんにいってみようと思う。楽しみだなぁ。

















