こりゃ山清水みたく濁りの無い、清らかな心の持ち主じゃないと見えない仕組みなのかねぇ?
機械から出て来た紙を訝しげに検めた後、それを天上へともたげ、蛍光灯の光にかざしてみる。紙に変化は、ない。何度も機械へ通したせいで紙が熱を持ってしまっている事以外には、これといった変化は現れていないようだった。
私は悔し紛れの妄想と共に、すっかり打ちのめされてしまった。
だめだ。どうしよう、何回やってもラミネートできないヨ・・・。
ーー場所は新宿。駅の東南口を出てすぐの処にある「スクエニカフェ」にて、私は混迷の限りを尽くしていた。
カフェの利用特典でもらえるランチョンマット。

(写真はラミネート済みのランチョンマット)
これが、「追加料金を二百円を払えばラミネート加工が出来る」というので欣々然としてお金を支払って、店の一階奥、エレベーター付近に設置されたラミネーターに受け取ったランチョンマットを通してみたわけなのだが・・・。
何度やっても上手くいかないのである。
他の人は上手いことラミネート出来ているにも関わらず。
っ。なんでやっ。なんでわたしばっかり上手くいかんのや。こりゃ山清水みたく濁りの無い、清らかな心の持ち主じゃないと見えない仕組みなのかねぇ?ーーー
私は頭を捻りながら、泣きの一回を試した。しかし、唸るラミネーターから排出されたのは案の定、変わり映えのしないただの紙のランチョンマットだった。念の為、訝しげに検めたり、電灯にかざしてみたりしたのだけれど、無論そこに見えない何かがあるわけでもなく。私はそれに気がつくと、薄くため息をつき、全てを諦めた。
だめだ。どうしよう、何回やってもラミネートできないヨ・・・。
これはもう店員さんにラミネートのやり方を聞きに行くしかないかぁ。
もはや残された手立ては、それくらいだったので、私は肩を落としながら足を店のカウンターの方へと回転させ、重い一歩をにじり出した。
そんな折。
後方から思いもよらぬ声が掛かった。
「あの・・・、ラミネート出来ない感じですか?」
驚いて振り向く。するとそこにはとても可愛らしい若い女の子が。
「ラミネートのやり方が解らない感じですか?」
少し困惑した表情を浮かべながら、女の子は私にそう尋ねた。どうやら見るに見かねてポンコツな私に手を差し伸べてきてくれたようである。地獄に仏とはまさにこのことだ。
「あ、ああ、そ、そうなんですよ。ラミネートのやり方が解らなくて。へへへへ。」
「ああ、それじゃあ、受付で透明なケースって貰いました?ランチョンマットをそのケースに入れて、この機械に通すんですけど・・・。」
「えっ!えええええぇ?!あっ、あああ、そうなんですね???!!!!」
と、トウメイなケース?
ナニソレ、貰ってない。ドウイウコト?
てか、言われてみれば、ラミネートってプラスチックのケースに紙を入れて、熱をかけながらプレスして紙をプラスチックの中に封じ込める、みたいなものだったっけ?
そういう概念すらワスレテイタヨ。
ワタシはただ、このキカイにランチョンマットをトオセばシゼンとラミネートしてくれるモノだとオモッテイタヨ。(アホですな)
ソーダッタンダ。
シカシ、このカワイコチャンってば、こんなアホにわざわざコエをカケテ、コンセツテイネイにヤリカタをオシエテクレルナンテ・・・、
女神じゃんッ!!!!
「ア・・・アリガトウゴザイマスっ!!!!」
私は理解すると同時に女神に深々と頭を下げた。これまでの私の奇行を目撃されていたのだという面映ゆさもあったけれど、もはやそんなことはどうでも良かった。私はただただ女神の親切心に敬服するばかりであった。
「いえいえ。」
女神は少し照れた笑いを浮かべながら、もう一台のラーミネーターの方へくるりと体を向けて歩き出した。その背中を私は惚れ惚れしながら熱く見送る。
なんていい女なんだ・・・。さすが女神だぜ・・・。といった具合に。
そうして、女神が台についたのを見届けると、私はすぐに受付へと急いだ。
「ラミネートに使う透明なケースを貰い忘れまして・・・。」
「ああ!そうでしたか!では、こちらを。」
・
・
・
ーーそんなこんなで、遂に透明なケースを入手した私は再びラーミネーターの場所まで戻り、今度はちゃんとケースの中にランチョンマットを挿入してから機械に通した。
やおらラーミネーターから排出されるランチョンマット。

今回はピシッとラミネートされている。
キラキラと光を乱反射させたそれは、まるでマリードメディシスの出産を見た時の高鳴りを再現するかの如く私の胸を打ち鳴らし、目をもくらませた。
それほどまでに、その祝福された光景は神々しくて美しいものであった。
(ただのランチョンマットだよ)
だから、私は嬉しさのあまり、思わず心の中で叫んだ。
ああっ女神さまっ!!!

と。(ナツカシイネ)
女神様、ありがとう、と。
そういう気持ちでいっぱいになった私は礼参すべく、再び女神に駆け寄った。
「ラミネートできました!!ありがとうございましたっ!!!」
再度礼をされて、女神は照れていらっしゃったけども、私を原始人から人間にまで進化させてくれたのだから、お礼の言葉だけでは足りないくらいだろう。

(「2001年宇宙の旅」より)
できれば、お礼にチョコボたい焼きを献上したいところである。

けれども、時間制限のあるカフェで時間をとらせるのは逆に迷惑でしかないので、結局お礼の言葉から二の句も継げぬまま、やむなく女神とはお別れしてしまった。
ああ、あの時の女神よ。今はどこで何をしているのかわからないけれど、私はあなたを忘れないよ。本当にありがとう。
しかし、女神もそうだけど、ほんっとうにみんな優しいな。
巷では東京の人は冷たいと言うけれど、そんなことはない。
だって、前も東京で、見知らぬ人から私の背負っているリュックが全開になっていることを教えてもらえたし、今回の女神の件もそう。
住んでる場所なんて関係なく、みんな優しいのだ、と思う。(単純にアホを憐れんでいるだけのことなのかもしれないけども)
実は8月~9月にかけては人付き合いで色々とあって、人間不信気味になっていたところだったのだけど、今回女神の優しさに触れられたおかげで気持ちがリセット出来たので、本当に東京へ行って良かった。
おめでとう。
ありがとう。
これからは私も女神に習って人に優しく、親切にしようと思う。
そして、まずは出会えた全ての人たちに深謝を。
Rejoice evermore.
Pray without ceasing
In every thing give thanks:
Beloved,I wish above all things that thou mayest prosper and be in health,
even as thy soul prospereth.
(愛するものよ。あなたの魂がいつも恵まれていると同じく、あなたが全てのことに恵まれ、また健やかであるように、私は祈っている。)
ていうか、全体的にネタが古いよね・・・。歳がバレちゃう。




