胎児水腫となって死産した話⑦
厄運
さて、以前にも書いたが、最初私はクリニックで産むつもりだった。何故かといえば動機は不純そのもので、ずばり退院時に出るご飯が美味しそうだったから。
それを、別な話のついでに母に伝えると、母のいつも多い口数が更に増し、隙間なく話し続けるので、私はただただ閉口しながら耳を欹てた。
「出産は何があるのかわからないのよ。もし出血が酷かったら輸血をしなければならないし。他にも転倒とか何か重大なトラブルが起きるかもしれない。それにもう貴方30代後半でしょ。歳を取ると色々とリスクがあがるのよ。それに-(中略)。だから、もしそういう不測の事態が起こってもすぐに対処できるように産院は総合病院にしておきなさい。」
私は昔からいつも母の言葉に反発ばかりしてきたが、この時ばかりはそれもそうだな、とすんなり聞き入れて母の言うとおり産院をクリニックから総合病院へ変更した。
そうと決まれば、善は急げですぐに出産予約を取り付けるべく、その総合病院へ電話をかけてみた。
しかし、そこの総合病院は最近改築されたばかりで人気があるため、私の出産予定日前後はもう既に予約で埋まっていた。
私は必死で食い下がったが、電話口の相手は「その前の週なら空きがあるんですけどねぇ。すみませんね。」とひんやりとした声で言い捨て、電話は切られた。
そこで、今まで診てもらっていた産婦人科に泣きつくと、なんと出産予定日を少しズラしてくれ(ご法度ではないのか?)、そのおかげでどうにか件の予約が取れた。
「では、さっそく今度妊婦健診に来てもらうことになるんですけど、もう8月15日しか予約が空いてないないので、その日に来てください。」
8月15日といえば、お盆の真っ最中。病院が混むことは想像に難くないが、私は二つ返事で承諾した。
だが‐。
今思えば失敗だったのだ-。
無理を言ってでも別な日に診て貰えば良かったのかもしれない。
続く