胎児水腫となって死産した話⑤
一週間分ほど小さい胎芽
私の胎芽がいた、という報告に、彼も友人も、家族も皆喜んでいた。
けれど、当の本人である私だけが浮かない顔をしていた。
何故なら、胎芽が小さいからだ。通常よりも凡そ一週間分ほど小さい。
聞くところによると、なんでも、排卵日のズレとかで、一週間分くらい小さくても問題ない場合も多いらしい。
しかし私にはなんとなく、私に限って排卵日がズレることはありえない、という確信めいたものがあった。
何故なら生理は順調そのものだったし。
それに、彼とは遠距離だったので、妊娠のきっかけとなった日も大体特定できていた。
では、もし本当に排卵日がズレていないとするならば、単純に成長が遅い、ということになる。
私は以前、友人から成長が遅いと、染色体異常の可能性がある、という話を聞いていた。
その話を今更思い出し、気になって調べたところ、もし胎児に染色体異常があるのだとすると、自然淘汰のため流産の可能性が高くなる、とあった。
(もしかして、うちの子も染色体異常、、、?やっぱり流産してしまうの?)
そう考えると不安で不安で仕方がなかった。
不安のあまり、ネットで検索に次ぐ検索を繰り返し、最早ノイローゼ気味になるも、それでも検索する手は止められなかった。
そして診察の日。
「うん、いいですね。」
「出産予定日は2月24日です。」
(良かった、、、、今回も、大丈夫だった、、、。)
私の不安は杞憂に終わり、ほっと胸を撫で下ろすのも束の間、先生は即座に産院を決めろ、と言ってきた。(こちらの産婦人科で出産はできない為)
私は念の為、事前に目星は付けていたので、
「一応、出産する病院は○○町の、○○クリニックにしようと思っています。」と言うと、それを聞いた途端先生は目の色を変えて、
「え?!そこのクリニック、僕の後輩がやってるんだよ。」と 嬉しそうに言った。
「だからもし、出産予定日が予約で埋まっていても、僕がねじ込んであげるよ。」
(いや、そうすると他の人にも迷惑掛かるし、別にそこまでしてくれなくてもいいんだけどなぁ。。。)
そう思いながらも
「え?!そうなんですか、それはすごいですねぇ。」と喜んでみせた。
すると間髪置かずに、先生が一言。
「産みたい?」
「(え?!当たり前の事を何故聞く???)・・・はい!産みたいです!!!」
「じゃあ注射しよう。」
「・・・・・え?!!!!!!(注射?!!!!)」
こうして私は別室へ連れて行かれ、言われるがままにベットに腹這いで寝そべり、右側のお尻に注射を一本打たれた。
一体何の注射を打たれたのか若干気になったが、先生は結局最後まで「流産しないようにする注射です。」としか言わなかった。
そして診察の最後。先生は珍しく笑顔になって「次週診て大丈夫なら、母子手帳もらってね。」と明るく言った。
(!!!!!!!
母子手帳!!!!!!!
遂に、、、遂にこの時が、、、、、!!!!!!)
私は嬉しさのあまり軽くトリップした脳内で母子手帳を握り締めながら無茶苦茶に踊り狂った。
「じゃあまた来週ね。」
先生の言葉にふと我にかえると、口角の上がった自分に気が付いた。
(そういえば、最近ずっと笑っていなかったなぁ。)
続く