初めての内視鏡検査 〜検査〜 Part.1
検査室に入ると、機材に囲まれたベッドの前で、すでにオペ着に着替えた先生がゴム手袋をはめてスタンバイしており、おまけにその無機質な室内には、先生の趣味と思われる音楽が大音量で鳴り響いていた。
「うつ伏せになって下さい。」
ーこのイントロには覚えがある。90年代初頭っぽいダンサブルな感じ。そこに乗っかる鼻にかかった甲高い声。朋ちゃんだー。
私は先生の指示の通り、診察台にうつ伏せになった。すると次は、左側面を下にして横を向くように言われたので、その通りにした。
「では始めます。」
その声と共に、尻に冷たいゼリーを塗りたくられた。だが、そこでようやく、私はあることに気づく。
ーあら?ちょっと待って、麻酔、しないの?ー
先日、母の友達も内視鏡検査を別の病院で受けたらしく、母の話では、その時、その友達は全身麻酔をしたから何の痛みも感じず、楽勝だったそうだ。
だから私は、てっきり麻酔がデフォだと思い込んでしまっていたのだ。
ーえ、麻酔なしなの?どうしようー
しかし、考える間もなく、ひんやりとした物体Xが遠慮なく私の内側に入ってくるのを感じた。そして、物体Xは不気味に蠢きながら私の中を突き進む。
・・・だが、意外となんてことはない。ただ、虫が這いずっているような感じがするだけで、痛くはないのだ、全く。そのため、私は拍子抜けし、わはは、なんだヘッチャラヘッチャラ、チャーラーヘッチャラ、なんて胸の中で陽気に歌い出すなどして、すっかり余裕をかましていたところ、先生がポツリ。
「次のカーブ、痛いからね。」
え?ー
高まる伴奏と共に、粘着くつ歌声は大きく伸びながら私の頭の中を駆け抜けてゆくー。
続く
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