胎児水腫となって死産した話③
悪阻の始まり
6w
彼とは遠距離恋愛だった。
場所は詳しくは書かないが、彼の家まで行くのには公共交通機関を使っておよそ2時間かかる。
その日はもともと彼に会いに行く予定の日で、本当だったら将来について、そして今度産まれてくるこどものことについて話し合うつもりだった。
名前はどうする?とか、いつから一緒に暮らす?とか。
だけど前日に医師から告げられた「来週胎芽が見えなかったら流産」という言葉で、それまで考えていた全てが吹き飛んだ。
かわりに、「流産になるかもしれないけど、本当に私と結婚してもいいの?」というような後ろ向きで暗い質問ばかりが頭に浮かんできた。
これからどうしようか-。
仕事終わり、今後のことをぼんやり考えながら駅へ向かう。
何となく身体がふわふわと浮いているような浮遊感があったが、前日泣き過ぎたせいで少しおかしくなったかな?などとあまり気に留めなかった。
しかし、新幹線に乗り、座席に着くなり胸焼けが。
(あれ?気持ち悪い。おかしいな?でも寝れば治るかな?)
前日、あまり眠れなかったのも手伝って、私はすぐに眠りについた。
そして数十分後。
目を覚ますとなんと胸焼けがパワーアップして強い吐き気に変わっていた。
目の前もグルグルする。
(え、、、ナニコレ、ヤバイ、、、、。)
私は襲い来る目眩と吐き気を必死で堪え、なんとか新幹線を降りてフラつく足で彼の家へと急いだ。
彼の家に着くと、彼はまだ仕事から帰ってきていなかった。
暗い部屋に灯りを灯し、フラフラしながらソファーに倒れ込む。
(これって、もしや、、、、、)
それから10分ほどソファーでぐったり休んでいると、相変わらず気持ちは悪いが少し食べられそうな気がしてきた。
来る途中にスーパーで買ってきたつけ麺に恐る恐る手を伸ばす。
そして、一口。
(お、、、、、いける!!!!!!)
結局完食し、気持ち悪さは若干和らいだ。
がしかし、依然として目眩は残ったままだった。
気分は最悪だ。
しかし同時に、ついに訪れた悪阻の喜びも禁じ得なかった。
「悪阻が来たということは、、、、だ、、、、大丈夫、、多分、、、大丈夫、、!!!!!」
続く